商社、機能生かしアジア地域を強化
2008年07月29日 15:13 |
|
(※小見出し:再構築の1年)
日系商社では、主力の生産基盤である中国の強化、地理的要因を生かした東南アジアでの生産基盤の確立、欧米企業を中心とした第3国取引および内販などがある。これまでは、香港のコントロール機能の活用により、事業は安定的かつ順調な動きを見せていた。しかし、生産面に関しては中国でのコスト高騰が急激に進んだこと、販売も日本マーケットの低迷やサブプライム問題を発端とした米国市場の悪化、また、欧州向けもユーロ高などから、生産・販売ともに全般的に厳しい状態に陥っている。
今年は「再構築の1年」「既存事業を軸とした方向性を見極める1年」と位置付ける企業が多い。そこで日系商社各社では既存事業の見直しに加え、チャイナプラスワン戦略の推進、また、香港に生産拠点を持つ雑貨や発展著しい非衣料分野など、様々な対応策が図られている。来年に向けては「既存と新規事業の両輪から香港ビジネスを拡大する」としている。
(※小見出し:東南アジア戦略が加速化)
香港拠点では現在、中国生産の再構築を図りながら、東南アジア開拓を本格化させることが主流になっている。中でもベトナムでの取り組みが形になりつつある。
伊藤忠集團卓越有限公司(プロミネントアパレル)は、ベトナムでの対欧米向けシャツ生産が拡大している。同社では昨年の取扱高が2億7600万㌦(前年比6―7%増)、利益約6%増で推移しており、これはベトナム生産が順調に稼働している点も一因と分析。
現在、ベトナムでの生産規模(シャツ)は年間500万枚・取扱高2500万㌦と拡大基調にある。今後さらに拡大させるため、5月にはベトナムプロミネントを設置(人員約20人)した。現ベトナム事務所との2本柱でベトナムでのビジネスを本格化させる考え。
ベトナムでは定番商品の生産が一般的だが、昨今では価値ある商材への需要も高まりを見せているという。この傾向をとらえ、将来的には高付加価値商品の生産も視野に入れている。
同社ではベトナムのほか、バンコク拠点からコントロールしているミャンマーやラオス、リエゾンを構えるバングラデシュでの英国向け(一部対日)のシャツおよびセーターを強化し、アジア諸国全体をとらえた生産拠点の確立に注力する。07年の構成比は欧州40%、米国15%、対日20%、東南アジア25%(最終売りは米国が中心)。今後も全事業の強化から全体的底上げを図るとしている。
丸紅繊維亜太有限公司(MTA)、菱華有限公司(トレディアファッション)、日岩帝人商事〈香港〉有限公司もベトナムを強化する。
丸紅繊維亜太有限公司は、ホーチミン事務所の活用からベトナム事業を拡大する。ベトナムはウールおよび合繊、綿後染めなど素材開発力を軸に対欧米向けの垂直型提案ビジネスを推進する。その一環として、現在原料関係で進行しているタイ、韓国、台湾などでの仕組みも積極的に活用するという。売上高構成は原料45%、羊毛20%、テキスタイル10%、製品25%。
欧州向けは、特恵関税制度が活用できるカンボジアやバングラデシュでの開拓も本格的に着手する予定。現在は、政治的に安定し始めたバングラデシュでの素材・原料供給、布帛工場へのテキスタイル販売が伸びており、この仕組みも活用できると期待している。
今後はこれら素材・原料を軸にした取り組みや、好調な欧州ストア向けのメンズシャツ(07年度の生産数は昨対比140万枚増の200万枚)をさらに強化し、現状6億㌦の売上高を09年度に6億3000万㌦、2010年度には6億6000万㌦を目指す。
ベトナム事務所(ホーチミン)の積極活用で業績を伸ばしている菱華有限公司は、07年の取扱高は(ベトナム事業のみ)9300万㌦(前年比24%増)と拡大基調にある。ベトナム事務所は03年から着実に拡大している。要因として、同社では「安定的に高品質な商品が提案できるようになったため」と分析。また、インフラが整備されていることも一因になった。展開商材は布帛を中心としたパンツがメーン。
ベトナムでの生産はほぼ構築できたとし、08年には取扱高100万㌦の大台を目指している。
チャイナプラスワン戦略は、同社でもカンボジア、バングラデシュに期待。ただし、これらの国へは1からの構築は困難を要すとし、進出の際にはまず、日本に進出経験のある現地企業や、カンボジア、バングラデシュに生産拠点を構える香港および現地企業との連携から対応する。現在は一部だが、現地企業との連携が進みつつある。
日岩帝人商事〈香港〉有限公司も同様にベトナム事業は構築している。展開アイテムは、スポーツ関連を中心にパンツやコートなどいずれもカジュアルになる。
すでに生産基盤は整っているが、ベトナムでも深刻化しているコスト高騰の影響から、今後は生産基盤の再構築を図るという。まずは、アイテムの絞り込みやトータル提案による効率的生産、拠点もベトナム南部に加え、北部も開拓中。アジア地域に関しては、原料から製品までの一貫体制の構築がポイントとしている。
日系商社によるアジア戦略はまず、既存の中国拠点を再構築し、新規拠点に位置付けるベトナムの確立がポイントになる。これらの拠点を強化しつつ、特恵関税制度が活用できるカンボジア、バングラデシュの開拓が主流になりそうだ。
(※小見出し:高付加価値化で事業創出)
高付加価値の提案から、既存事業の促進、新規事業の創出を図る企業が増えている。これは生産管理面の強化、また、香港に生産基盤がある雑貨関連の着手や発展目覚ましい産業資材の拡充など多角的に取り組まれている。
住金物産〈香港〉有限公司は、主力の対日ビジネス(取扱構成は日本向け80%以上、米国向け10数%)を強化するため、4月1日、これまでの東莞事務所を深●に移転、深●事務所(人員約15人)として開設した。より現地密着型のビジネスを行うため、マネージャーを香港から常駐させた。また、地場での人材採用もより効果的に行えるとしている。深●事務所では上海、青島などにある中国生産管理センター(CPC)の機能を組み入れ、より高精度な生産管理体制を敷くことで価値観を訴求する。
原料、テキスタイルを主力とする蝶理〈香港〉有限公司では、新たに欧米向け製品事業の確立を目指している。現在は、本体との連携から可能性を探っている段階だが、蝶理の持つ中国での生産基盤の活用から可能性は高いという。
日本の差別化素材を中国で販売することも重要なミッションになる。差別化素材は織り方や撚糸などを多様に組み合わせることから提案するもの。品質管理面も重視する。そのため、専属の品質管理担当者を配し、最新の検査機器も導入している。物性、外観、工程管理など基本的な検査は自社内で行えるように体制を整えている。同社では素材から製品、品質管理までの一貫体制から価値観を創出している。
田村駒〈香港〉有限公司は、この1年間でローカルスタッフを3人拡充した。現在は常駐の日本人3人、ローカル15人の計18人体制を敷いている。ローカルの拡充により生産、管理、技術指導などをより効果的に行うことができるという。
現在、取扱構成の70%が対日を占め、その全てがSPA(製造小売業)向けになる。現在は、香港に進出している欧州企業や、香港のSPAチェーン店向けが加速化しつつある。基本的に日本向け同様、ヤングの高品質カジュアルで対応する。生産に関しても日本向け同様、香港からのコントロールで対応する深●、東莞、広州で行われる。
同社ではパターン作成、グレーティング、素材調達から縫製までを手掛け、取引先との工賃、納期などの商談にあたっている。このメーカー機能を活用することで、欧州および香港SPAとの事業も拡大する。あくまでもコスト競争型ではなく、高品質・高感度に軸足をとった取り組みに力点を置く。
来年からは、さらに香港内企業への素材および製品販売を強めるという。そのため、田村駒グループでの取り組みを本格化させ、まずはローカルの営業要員、パタンナーなどソフト面の増強を図る。
内販事業で価値観を見出すのは八木香港〈香港〉有限公司。同社では、日本と中国(プログレス上海)で伸長している生地リスク販売「テキスタイル・プロジェクト」(テキプロ)を香港で展開する。
テキプロは、日本と上海で500品番以上を展開し、香港でもこの全ての品番を扱う。取引先は、日本に加え、高付加価値が認められている欧州および消費動向が高い香港地場企業を相手にする。
すでに、コンセプトでもある"高品質・高感度・クイックデリバリー"が認知され、一部だが引き合いも出始めているという。香港でのテキプロ拡大のため、専属の日本人スタッフも1人配置した。事業が軌道に乗り始めた際は、さらにスタッフを採用する予定。
対日の製品事業が約90%を占める三井国際服装有限公司(アルタモーダインターナショナル)は、順調軌道に乗りつつある欧米向けをさらに強化する。現在、対日事業は百貨店アパレルおよびセレクトショップ向けにニット、シャツなどを展開している。欧米向けに関してはニットが中心だが、今後はアイテム拡充の一環からジャケットも手掛ける予定。対米強化のため、年初には専属のチームも設置。より本格的に稼働できるように今は体制を整えつつある。
また、新規事業の一環として、ファッション雑貨関連の展開も視野に入れている。現在はアパレルのサポート程度だが、今後は広東省に広がる生産拠点の活用から、展開の可能性があるいう。
産業資材関連に注力するのは東洋紡高機能産業〈香港〉有限公司。同社は取扱構成の約90%を衣料が、約10%が非繊維事業になる。強化対象に据える非繊維は、ACフィルター関連を拡充に注力する。すでに、米国で形になりつつある事業で、ほかに耐熱フェルトも着手し始めている。
一方、90%を占める衣料関係はコーポレートアパレル(ユニフォーム)を主体とする。構成比は製品50%、テキスタイル50%。同事業では、親会社・東洋紡の特化素材の活用による高付加価値商材の拡充が課題になる。これまで、衣料関係はフォロー体制での取り組みに注力してきたが、今後はより事業拡大を図るため、販売力に力を入れる。信頼感が高まりつつあることから、販売力を強化することでさらに拡大できると期待している。取引先は主力の欧州および豪州になる。現在は、欧州の世界的なチェーン店との商談が進んでいる。
今後、繊維関連は現状維持としながらも、非繊維事業は売上高(非公表)1・5倍増を計画する。












